海外FX初心者
GEMFOREX(ゲムフォレックス)は、2023年8月1日に約6億ドルで「Galaxy DAO」へM&Aを通じて事業承継契約を締結したと公式サイトで発表しました。
しかし、8月1日の発表時には、GEMFOREXで未払いのままのユーザー資金についての詳細は触れられず、8月15日に追加情報を公開するとのアナウンスが行われています。
そして、期待されていた2023年8月15日、Galaxy DAOから「Galaxy DAO Whitepaper V1」として新たな情報が明らかになりました。
本記事では新しく公表されたGalaxy DAOの詳細や、長らく待ち望まれていたGEMFOREXの出金遅延者への返金対応に関する情報を中心に解説していきます。
Galaxy DAOの新たなホワイトペーパー詳細
GEMFOREX(ゲムフォレックス)は、2010年にEAの無料提供サービスを行うGemTradeを立ち上げ、2014年から本格的に海外FX業者としての活動を始めました。
その後、日本においても主軸たる業者としてFXサービスを提供し、他業者にないボーナスキャンペーンの展開等で人気を博しましたが、度重なる資金トラブルの末に実質的な経営破綻に陥っています。
2023年8月1日にはGalaxy DAOへM&Aによる事業継承の発表が行われ、顧客への資金返還が期待されていましたが、GEMFOREXのユーザーが最も関心を持っていた拘束中の資金の返還に関する具体的な詳細は示されず、8月15日の追加発表を待てとのみ伝えられていました。
GEMFOREXは消滅へ
Galaxy DAOによるGEMFOREX(ゲムフォレックス)買収の詳細については、前回発表時とほぼ同様の内容が記されています。
事業継承の概要
Galaxy DAOは、Gemtrade LLCを買収します。Gemtrade LLCおよびその取引プラットフォーム GEMFOREXが保有するすべての債権および支払義務、ユーザー情報はGalaxy DAOに譲渡されます。
譲渡日は2023年8月1日午前10時(日本時間)です。
買収後、Gemtrade LLCはGalaxy DAOに完全に吸収され、GEMFOREX取引プラットフォームは存在しなくなります。
ホワイトペーパーによれば、GEMFOREXの保有する支払義務やユーザー情報はすべてGalaxy DAOに譲渡されることが明記されています。
しかし、このM&Aに伴いGEMFOREXが事実上の消滅を迎えることは、法的な観点から見ても大きな影響を持つでしょう。
GEMFOREXユーザーにとって、資金の返還を求める訴訟を考えた場合の相手は、あくまでもGEMFOREXであってGalaxy DAOではありません。GEMFOREXが消滅するとなると、ユーザーは資金の返還を求める法的手段を取るのが難しくなる可能性が高まります。
資金返還の詳細が記されている
8月1日に公開されたGalaxy DAOの情報はほんの僅かなものでしたが、8月15日に公開されたホワイトペーパーは一転、項目別に詳細を説明しており、文字数も非常に多いものとなりました。
そのすべてに目を通してみると、大まかな内容は以下の通りでした。
8月15日公開のホワイトペーパーの主な内容
- GEMFOREXの破綻は不正利用者と収納代行業者によって引き起こされ、GEMFOREXは被害者である旨の強調
- Galaxy DAOの今後のサービス展開に関する詳細情報
- 拘束資金の返還を「GBOND」で行うと発表
ホワイトペーパーを一読した感想として、「極端に読みにくい」という印象が残ります。
このホワイトペーパーの主な目的は、Galaxy DAOの詳細とGEMFOREXの出金遅延問題の対応を明確にすることであるにも関わらず、その説明は専門的な言葉や不明瞭な表現に満ちています。
特に、GEMFOREXが主なターゲットとしている日本の顧客を考慮すると、難解な専門用語や横文字の過度な使用は顧客中心の姿勢とは言えません。重要な情報を、わかりやすく伝えるべき箇所を、意図的に曖昧な言葉で埋め尽くしているように感じます。
また、「GBONDの配布」という資金返還の核心部分も難解な言い回しで述べられており、仮想通貨に精通している者でなければ読解は難しいでしょう。
Galaxy DAOのホワイトペーパーは全文英語で記載されているため、日本人が内容を理解するには翻訳ツールを使わなくてなりません。しかしいざ翻訳してみると、google翻訳では比較的綺麗な日本語が出力されるものの、より精度の高いと言われているDeepLではうまく翻訳できません。したがって、このホワイトペーパーはgoogle翻訳を使用して日本人が作成した記事である可能性も考慮しなければなりません。
Galaxy DAOは「GBOND」で資金返還を行うと発表
Galaxy DAOはGEMFOREX(ゲムフォレックス)の出金遅延者に対して、独自トークンであるGBOND(GEMFOREX BOND)を発行すると発表しています。
公式サイトでは「1GBOND=1ドル」として評価されると記載されていましたが、このGBONDとは一体どのようなものなのでしょうか。
本章では、Galaxy DAOのホワイトペーパーに記載されたGBONDの詳細を解説していきます。
GBONDは売買できない
GBOND(GEMFOREX BOND)トークンとは、GEMFOREX(ゲムフォレックス)からの出金遅延者に対してGalaxy DAOが発行する独自トークンです。
出金遅延者に対するGBONDの発行は、GEMFOREXからの出金遅延者に対する、実質的な補填という扱いであると言っていいでしょう。
しかし、ホワイトペーパーによると独自トークンは売買ができないと説明されています。
GBONDについての説明
- 1GBOND=1ドルとして評価される
- GBOND はデータベース トークンであり、公開暗号通貨トークンではない
- 公開市場または非公開市場で購入、再販、譲渡することはできない
配布されたGBONDは、売却してステーブルコインもしくは現金資産へと交換することができません。つまり、Galaxy DAOは現時点で資産価値のある仮想通貨や米ドル、日本円といった通貨での返還は行わないと明確に表明したことになります。
また、GBONDの詳細な配布方法や時期については、9月1日に公開予定のホワイトペーパーに記載されると、Galaxy DAOの公式Discord内のQ&Aで明示されています。
GBONDのロックとアンロック
Galaxy DAOの配布するGBONDは「ロックされた状態で発行される」と明記されています。ロックされたGBONDとロックされていないGBONDの違いは、遅延利害金が付与されるか否かです。
GBONDのロックとアンロック
すべての GBONDは完全にロックされた状態で発行され、「ロックされたGBOND」と呼ばれます。
GBONDはいつでもロックを解除できます。GBONDは一度のみロックを解除でき、一度ロックを解除すると再ロックすることはできません。GBONDは全額でのみロック解除でき、ユーザーの GBOND 保有額の一部をロック解除することはできません。
GBONDのロックを解除すると、ユーザーはGalaxy DAOで保有するクレジット権利の全額を、ロック解除時に付与されたロック解除されたGBONDと交換することを意味します。この交換により、信用権が事実上決済され、取り消されます。
GBONDのロック状態とロック解除状態のメリット、影響、利点については、以下の見出しで詳しく説明します。
発行されたGBONDをロック解除せずに所有していた場合、所有しているGBONDの評価額に対し、年5%の単利(月利0.416%)で「Delayed Damages Token(DDT)」(詳細は以下に記述)を受け取る事ができます。しかし、ロックを解除してしまうとDDTの受け取りはできません。
Delayed Damages Token(DDT)は、GBONDと同様に1ドルの価値を持つとされています。また、ホワイトペーパーによるとDDTはロックされたGBONDの合計額に基づいて毎月1日に付与を行うと記されています。
GBONDのレンディングとステーキング
Galaxy DAOの発行するGBONDは、ロック解除後にレンディングとステーキングに利用できるとの説明があります。
GBONDレンディングとステーキング
ユーザーはロック解除後のGBONDをレンディングプロトコルに入金し、そのGBONDを担保にUSDCを借りることができます。
Galaxy DAO内のUSDCの借入率は5%に設定されます。GBONDは1GBOND / 1USDのレートで発行されるため、ユーザーは1GBONDにつき0.05 USDCを借りることができます。
ロック解除後のGBONDをプールにステーキングすると、ユーザーはGBONDに流動性を追加するラップトークンであるstGBONDで支払われる年利25%の利息を得ることができます。
ロック解除後のGBONDは、レンディングプロトコルに入金したGBONDに対して0.5%のUSDCを借りることができると記載されています。
さらに、ロック解除されたGBONDは、Galaxy DAOの「GBOND Liquid ステーキング プール」にデプロイすることもできるようです。ステーキングによる利息は年間で25%であるため、4年で元金分の収益が得られる事になります。
GBONDの現金化は難しい
Galaxy DAOとGEMFOREX(ゲムフォレックス)が一方的に決定したGBONDの発行は、大きな批判の的となりました。
配布時点で現金化する手段はレンディングしかありません。10,000ドルの資産があっても0.5%の500ドルしか現金化できず、さらにその500ドルはレンディングによる借入額となるのですから苦言を呈されるのは当然のことでしょう。返金対応を心待ちにしていたGEMFOREXの出金遅延者が、この発表を聞いて納得するとは到底思えません。
Galaxy DAOがこのような資金返還方法を打ち出したということは、同社に返金できるだけの資金が存在しない可能性も考慮しておくべきでしょう。事業継承に使用された6億ドルは一体どこに消えたのでしょうか。事業継承自体が自作自演であったのではないかと疑念が深まります。
9月1日には追加のホワイトペーパーが発表されるとのことですが、現在発表されている内容の詳細、および具体的な利用方法の公開という内容になることが予想されます。
今回8月15日に発表されたホワイトペーパーは、実質的に「出金遅延は解消されない」という内容で、資金を拘束されているユーザーから見ると非常に勝手で残念なものでした。
GEMFOREXの出金遅延者に優遇サービスを予定している
Galaxy DAOのホワイトペーパーでは、Galaxy DAOが今後スタートする予定のサービスにおいて、GEMFOREX(ゲムフォレックス)からの出金遅延者は優先優遇されると記されています。
具体的な優遇内容は、「より良い条件での取引が可能」である事と、「優先的にローンチパッドを利用できる」2点です。
より優れた取引サービスを提供する
GEMFOREX(ゲムフォレックス)の出金遅延に対処するため、Galaxy DAOは新たにオープン予定の取引所で、出金遅延を経験したトレーダーに対して、他のトレーダーには提供されない特別な優遇措置を提供すると明言しました。
提案されている優遇措置
- FX取引でより高いレバレッジを利用できる
- より多くの通貨ペアへのアクセス
- 追加の取引商品へのアクセス
こちらの優遇措置に関しては、後日ホワイトペーパーにて詳細が発表されるとのことです。
ローンチパッド機能を優先的に利用できる
Galaxy DAOを通じて新興企業やシードラウンド企業に初期投資する事を、ローンチパッド機能と紹介しています。
GBONDを保有するGEMFOREX(ゲムフォレックス)の出金遅延者は、誰よりも早くこの機能を利用できると強調されています。
ローンチパッド機能についても、詳細は後日発表のホワイトペーパーに記載されるとのことです。
GalaxyDAOの新たなホワイトペーパーの内容と今後
Galaxy DAOが8月15日に発表したホワイトペーパーは、8月1日に発表されたものと比較すると、Galaxy DAOの今後の展開やGEMFOREX(ゲムフォレックス)の出金遅延者に対する対応の内容についてかなり具体的な記載がなされていました。
しかしやはり、「顧客が求める方法で資金の返還が行われない」ということが残念でなりません。
Galaxy DAOの新たなホワイトペーパーは抽象的な表現が目立ち、具体的な情報は次回のホワイトペーパーへと先送りされています。この曖昧さがGEMFOREXの出金遅延問題への対応に関する不安をより一層増幅させているように感じます。
8月1日のホワイトペーパー発表後にFXplusが掲載した記事内において、「Galaxy DAO自体をGemforexが裏で手を引いている可能性は否定できない」といった表現をしていましたが、今回Galaxy DAOが発表したホワイトペーパーを読む限り、その疑問はさらに深まる一方です。
ともあれ、Galaxy DAOのサービス開始はまだ始まっていません。今後の「完全版」とされるホワイトペーパーの内容に大きな注目が集まります。