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転換期を迎えるイタリアFX業界

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update 2021.08.31 15:27
転換期を迎えるイタリアFX業界

update 2021.08.31 15:27

新世代のトレーダーが台頭する可能性

イタリアのFX市場は、現在までのところ欧州の金融の中心である英国と比較しても市場規模が非常に小さいものである。しかしながら、知識・教養のある若い世代の個人投資家を中心としてオンライン株式トレードが増加傾向にあり、将来的にはFX市場においても新世代のトレーダーによる活発な取引がなされるものと期待が高まっている状況だ。

EU(欧州連合)のリテールFX市場は、成熟度と市場サイズの異なる比較的小さな規模の集合体であるものの、欧州全体で見ると世界で最も大きなリテールFX市場の1つとして捉えることができる。EUを構成するイタリアは、経済規模という観点からはEU域内でも上位に位置づけられ、イタリア経済がEU域内に与える影響や重要度は大きなものであると言えよう。事実、IMF(International Monetary Fund、国際通貨基金)の2018年のデータによれば、イタリアのGDP(Gross Domestic Product、国内総生産)は2017年末に1兆9,350億ドルとEU域内で4番目となる規模を誇る。なおかつ英国が近い将来EUを離脱(ブレグジット)すれば、イタリアは3番手に浮上する見通しだ。

イタリアの金融市場に関しては、一般的に銀行システム、資本市場、そして保険市場の3つで構成されており、それ以外は国策に大きく依存・影響を受けている特性がある。EU域内の他の先進国と比較して市場規模では見劣りするものの、イタリアの資本市場はEUが歩んできた長い歴史の中でも大きな役割を果たしてきている。特に2007年からロンドン証券取引所グループの傘下となっているイタリア証券取引所(Borsa Italiana)は、Eugenio Napoleone氏によってイタリア唯一の証券取引所として1808年に設立され、EUの資本市場の歴史を形作ってきた最も有名な1社であろう。そして注目すべきは、イタリア証券取引所において取引されるイタリア株式は欧州株の75%を占めているほか、株式市場の活発さを指し示すとされる売買回転率(Turnover Velocity, 一定期間の売買高を全上場株式数で除して求める)は100%を超え、EU域内でも高い水準を誇っている点であろう。更にイタリアの上場株式は非常に流動性が高く、金融商品も多岐に亘るため、イタリアの個人投資家はデリバティブやETF、債券などに分散投資することが可能という特徴も有している。

しかしながら、イタリアのFX市場にフォーカスすると、その市場規模は小さく、これまで欧州におけるFX取引の中心的役割を担ってきたわけではない。また、イタリアの投資家は歴史的に見て保守的な取引を行う傾向にあることに加え、イタリアを拠点とするブローカーが非常に少ない点も特色として挙げられる。限定的なブローカーしか存在しない理由としては、イタリアの金融監督当局である国家証券取引委員会(Commissione Nazionale per le Societa e la Borsa, CONSOB)がハイリスクとみなす投資に対し厳格な規制策を敷いていることが影響していると見られている。事実、イタリア最大手銀行ウニクレディト(Unicredit)傘下のFineco Bank(本社:Rivoluzione d'Ottobre 16, Reggio Emilia 42123[1])が、唯一イタリアでFXブローキング業務を手掛けており、従来FX取引業務を提供してきたIWBankは現在サービスを行っていない模様だ。そしてイタリアのFX取引を手掛けるトレーダーの多くが、イタリア地盤のFXブローカーと取引するよりも、eToroやCMC Markets、ActiveTrades、Plus500といったキプロスや英国を拠点とする他のEU加盟国のブローカーと取引しているのが現状である。イタリアにおける主要FXブローカーの1社であるeToroによれば、世界中に1,000万人の顧客を抱える中イタリアには6万人(6%)のユーザーがおり、ボラティリティの大きさにもよるが、G10(Group of Ten、主要先進10か国)の中でユーロと米ドル、日本円、カナダドル、英国ポンドが主要取引通貨になっているという。

イタリアの株式及びFX取引に関して、イタリア証券取引所の業務開発部株式兼デリバティブ市場ヘッドを務めるMassimo Giorgini氏と、eToroのマーケットアナリストであるEdoardo Fusco Femiano氏はそれぞれ以下のようにコメントしている。

イタリアでは、個人投資家によるオンライン取引が現物株式における日次売買代金の20%以上を占めております。そして個人投資家は、伝統的な対面営業による株式投資からボイスブローカレッジ(電話による取引)やファンドを通じた株式取引へとシフトしている状況であります。またデリバティブ市場においてもオンライントレード化が進んでおり、例えばFTSEミッドキャップ先物(FTSE MID futures)では少なくとも20%から25%はオンライントレードが占め、デリバティブ市場における個人投資家全体で見ると35%から40%はオンライン取引であると推測されます。

Massimo Giorgini, Head of Equity and Derivatives Markets Bussiness Development at Borsa Italiana - Finance Magnatesより引用

イタリアのFX取引環境は依然活気に満ち溢れています。そしてFX市場が拡大していくうえで金融教育が重要な要素として位置づけられると考えております。その様な中、イタリアではプロフェッショナルの投資家になるべく、大学を卒業し知識・教養のある若い世代が頭角を現してきているほか、一人当たり金融資産という観点から見ても、イタリアは未だ世界でも豊かな国であると言えるでしょう。そのため我が社ではイタリアのFX市場に大きな可能性を抱いております。また、FXは低マージンに加え取引量もコントロールできることから、投資初心者向けの金融商品と言え、若い世代を中心にFX取引需要が存在すると見ております。

Edoardo Fusco Femiano, Market Analyst at eToro - Finance Magnatesより引用

なおイタリアの投資家は、ドイツDAXなどの株価指数取引や、資産の運用管理を委託する投資家を選択した上で投資家の売買ポジションを自動的に真似る取引手法であるコピートレードに高い関心を示している模様である。

欧州でも大きな経済規模を誇るイタリアでは、オンライントレードを手掛ける資産運用ニーズがあることが確認できている。現状イタリアのFX市場規模は小さいものの、FXブローカーが画期的なオンライントレードサービスを提供することで若い世代を中心としたトレーダーの潜在需要を掘り起こせる可能性があり、イタリアのFX市場は今まさに転換期を迎えつつあると言えそうだ。

release date 2019.03.05

出典元:

ニュースコメント

CONSOBのイタリア市場規制と今後の展開

英国やEUの他の主要経済国とは異なり、イタリアはオンライン外国為替取引にはほとんど関心がなかった。これは、主にCONSOBが、高リスク投資と見なす商品に対し厳しい姿勢を維持しており、早期よりバイナリーオプション取引を禁止していることが関連していると考えられる。また、ユーロが公定通貨として採用されて以降、イタリアの外国為替ブローカーは、状況がはるかに有利な他のヨーロッパ市場と比べて、取引条件の面などから一歩及ばずといった状態が現在まで続いている状況であることも要因であろう。しかしCONSOBは、フランスの金融市場庁であるAMF、 そしてイギリス金融行動監視機構FCAの間で新たなイニシアチブを行う意向であることが噂されており、もしも実現した場合には、今後多くのブローカーがイタリアを新たな市場開拓の場として注目していく可能性も十分考えられる。加えて、外国為替ブローカーは、MiFID(欧州金融商品市場指令)に準拠した金融機関であれば、イタリアに拠点を持たずに営業が可能であることも、ブローカーにとっては利点だと言える。将来的に、イタリア自国の新たなる有力ブローカーが誕生することに期待したい。


Date

作成日

2019.03.05

Update

最終更新

2021.08.31

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

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プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

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