イタリア銀行協会、デジタルユーロの試験運用を計画
暗号資産関連
銀行間決済におけるCBDCの実用化を検証
700社を超える金融機関から構成されるイタリア銀行協会(Italian Banking Association)【以下、ABIと称す】は、欧州中央銀行(European Central Bank)【以下、ECBと称す】が開発する中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】であるデジタルユーロ採用のメリットを検証するために、同暗号資産の試験運用を計画していることを発表した。
発表によると、ABIは同協会のリサーチ部門であるABI Labと協力し、来年6月までに銀行間決済での利用を目的としたデジタルユーロの試験運用を開始することを予定しているという。この試験運用を通じてABIは銀行間決済を刷新するだけでなく、国際決済プロセスの改善を視野に入れ、CBDCの実用化を検証する見通しだ。ABIのプロジェクトは2つの作業領域に分けられており、ひとつはインフラと配布モデルの技術的な実現可能性の検討、もうひとつはデジタルユーロと既存の電子決済システムとを区別するユースケースの確立に焦点を当てるようだ。
ABIはデジタルユーロがプログラム可能な暗号資産としての特性を有していることに触れ、為替レートと金利リスクをより適切に管理できる可能性があると評価した。既にイタリア国内の銀行の多くはブロックチェーンプラットフォームであるスプンタ(Spunta)を導入しているという。ABIはデジタルユーロがP2P(ピア・ツー・ピア)トランザクションやM2M(マシン・ツー・マシン)トランザクションなどを用いて既存の銀行システムを再構築することができるとの考えを示している。
欧州では、ABI以外にもフランス銀行がCBDC向け銀行決済アプリをテストするなど、デジタルユーロに対する期待が高まっているだけに、今後もこれら金融機関の取り組みに注目していきたい。
official release 2020.12.24
ニュースコメント
欧州でデジタルユーロ発行に向けた動きが加速
約2年前にデジタルユーロの立ち上げを構想して以降、ECBはCBDCの開発活動を拡大し、その動きを加速させているようだ。また、今年10月にECBはCBDCに関するレポートを提出しており、同暗号資産の発行が避けられないものであることを指摘して同行の方針を明確にした。この流れを後押しするように、欧州委員会(European Commission)はデジタルファイナンスに関する政策イニシアチブの一環として暗号資産の法的フレームワークを整備するなど、欧州圏内における暗号資産関連サービスプロバイダーの活動をサポートしているという。しかしながらデジタルユーロ開発は依然として調査段階にあり、ECBは2021年半ばまでに次のプロセスに進むかを判断すると予告しているが、暗号資産を取り巻く環境はどのように変化していくのか、今後も欧州での動きを見守っていきたい。

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。