中国蘇州市、12月12日にデジタル人民元を配布することを決定
仮想通貨関連
大型セールイベントでCBDCのトライアルを実施
中国の蘇州市は、イーコマースサイトを中心とした国内最大のセールイベントが開催される12月12日に、中央銀行発行の独自仮想通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】であるデジタル人民元を配布することを決定した。
今年10月、CBDC開発の一環として深セン市政府がデジタル人民元を配布したが、今回、蘇州市も同様にそのユーザビリティを検証することを目的にしているという。前回、深セン市では専用のウォレットアプリを介してひとり200元(約30ドル)、合計1,000万元(約150万ドル)相当のデジタル人民元が宝くじ形式で配布されている。
この蘇州市でのトライアルでは、ユーザーがスマホの指紋認証を活用してデジタル人民元を送金するオフライン機能など、深セン市でのテストでは有効化されなかった技術も実装される予定だ。対象となる蘇州市の相城区では、多くの企業がデジタル人民元の受け入れを可能にするNFC(Near-Field Communication)やQRコード決済機能を備えたPOS(Point of Sale)システムを既に導入している。
また、中国では成都市でもデジタル人民元のベータ版トライアルが限定的に実施されており、大手商業銀行の口座と連動したウォレットアプリによる決済が成功したことが報告されているようだ。過去には中国農業銀行がCBDCのテストアプリを開発しているとの噂もあったが、デジタル人民元の早期発行は実現するのか、今後も中国での動きを見守っていきたい。
official release 2020.11.25
ニュースコメント
デジタル人民元が今後10年で中国全土に普及する可能性
先日、大手投資銀行のゴールドマン・サックスがデジタル人民元に関するレポートを発行し、同仮想通貨が今後10年で中国全土に普及するとの見解を示した。このレポートによると、デジタル人民元での年間決済額は19兆人民元(約2兆7,000億ドル)に達し、国内の消費決済における15%を占める規模にまで成長する可能性があるという。また、同行はデジタル人民元がキャッシュレス環境下で魅力的な決済手段になり得ると評価した上で、様々なプラットフォームとの互換性を持つことが成功の鍵になると指摘している。実際に中国ではアリペイ(Alipay)やWeChat Payなどの決済アプリが市場を独占しているため、デジタル人民元の普及にはこれらのフィンテック企業との連携が重要だと言えるだろう。先日、上海・香港証券取引所がアリババ傘下のアントグループの上場を延期し、中国当局はフィンテック業界の要人であるジャック・マー氏と対立することになったが、これがデジタル人民元開発にどのような影響を及ぼすのか、今後も国内での展開に注目していきたい。

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。金融ライターとして独立後は、仮想通貨およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。