KuCoin、全ての仮想通貨を対象に入出金サービスを再開
仮想通貨関連
大規模なハッキング被害からの早期復旧を実現
今年9月に大規模なハッキング被害を受けた大手仮想通貨取引所のKuCoinは、11月22日に全ての仮想通貨を対象に入出金サービスを再開したことを発表した。
先月、KuCoinは出金サービスを部分的に再開したものの、その対象はビットコイン(Bitcoin)、イーサリアム(Ethereum)、テザー(Tether)に限定されていたという。今回、KuCoinは全ての仮想通貨の入出金サービスを再開することを決定したが、未だ進行中の司法手続きが存在するようだ。現在、KuCoinは法執行機関の調査に協力しており、このハッキング事件の解決に取り組んでいる最中だが、失われた顧客資金に関しては同取引所および保険基金によって補償されるとの声明を発表している。
9月26日、KuCoinは大規模なハッキング被害に見舞われ、大量のビットコインおよびイーサリアム、トロン(Tron)、リップル(Ripple)、ステラ(Stellar)、その他多数のERC-20トークンが不正に流出した。KuCoinは直ちにサービスを停止してホットウォレットへの接続を遮断したが、結果的に同取引所から2億7,500万ドル相当の仮想通貨が盗難されたことが明らかになった。これを受けて多くの仮想通貨プロジェクトは、仮想通貨を凍結する、ハッカーからの回収を試みる、またはハードフォークを実施するなどの対応を見せているようだ。現時点でKuCoinは2億400万ドル相当の仮想通貨を取り戻している。
このハッキング被害以外にもKuCoinは問題を抱えており、最近ではシンガポールから同取引所へのアクセスがブロックされる事態に陥っている。特にMASは国外で活動する仮想通貨関連企業を規制する方針を示すなど、取り締まりを厳格化しているだけに、KuCoinはコンプライアンスやセキュリティ強化に注力することが求められると言えるだろう。
official release 2020.11.25
ニュースコメント
仮想通貨の新たな可能性を模索するKuCoin
最近、KuCoinはコレクタブルトークンを取引するNFT(Non-Fungible Token)取引所の立ち上げを試み、アートワークやGameFi(ゲームと分散型金融を組み合わせた分野)でのユースケース確立を目指すと発表している。このような取り組みは仮想通貨市場で拡大しつつあり、漫画家のホセ・デルボ氏がブロックチェーン上で作品公開を行うなどの動きも生じているようだ。これまでKuCoinはDigitalBitsと協業し、エンタープライズ通貨デスク(Enterprise Currency Desk)と呼ばれるブランド通貨(Branded Currency)の発行を支援するサービスを提供するなど、仮想通貨の新たな可能性を模索してきた。KuCoinは数カ月以内にNFT取引所をローンチすることを決定しているが、これがどのような成果をあげるのか、今後も同取引所の動向を見守っていきたい。

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。金融ライターとして独立後は、仮想通貨およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。