ウェルズ・ファーゴ、仮想通貨コンプライアンス企業のEllipticに出資
仮想通貨関連
仮想通貨取引所のトランザクションを識別するソリューション開発に期待
米大手銀行のWells Fargo(本社:420 Montgomery Street, San Francisco, CA 94104, USA
)【以下、ウェルズ・ファーゴと称す】は、同社のベンチャーファンドであるWells Fargo Strategic Capitalを介して、ロンドンに拠点を置く仮想通貨コンプライアンス企業のEllipticに出資したことを明らかにした。2019年9月にEllipticは、日本のSBIグループが主導したシリーズB(スタートアップ中盤)の投資ラウンドを通じ、AlbionVCやSignalFire、Octopus Ventures、Santander Innoventuresなどの企業から2,300万ドルの資金を調達することに成功している。今回ウェルズ・ファーゴが出資したことで、Ellipticは合計4,000万ドル以上の投資を得ており、これらの資金を投じてアジア地域への進出やパートナーシップの拡大を模索しているという。実際にEllipticは、東京およびシンガポールに新しく拠点を開設すると同時に、Facebook(フェイスブック)のリブラ(Libra)やLINEグループのLINK、中央銀行発行の独自仮想通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】などの多様な仮想通貨プロジェクトとの連携を図っているようだ。
Ellipticは、仮想通貨取引所によるトランザクションを識別することを目的に、Elliptic Discoveryという名称の銀行向けコンプライアンスソリューションを開発している。この製品は、2013年以降に収集された数百の取引所に関する情報を集積したデータベースに紐づいており、各取引所の所有者や所在地、規制状況、コンプライアンスポリシーなどを把握することが可能だという。ウェルズ・ファーゴは独自仮想通貨の試験運用を計画するなど、将来的に国際決済サービスの自動化を試みているため、同社がEllipticへ投資したことは、リスク管理の観点からも有効だと言えるだろう。
これまでウェルズ・ファーゴは、仮想通貨に懐疑的な見解を示しており、クレジットカードによるビットコイン(Bitcoin)の購入を禁止するなどの措置を講じていた。しかしながら、仮想通貨市場の拡大と共に、ウェルズ・ファーゴはその態度を軟化させているが、Ellipticへの投資が同社の事業にどのような変化をもたらすのか、今後もその動向に注目していきたい。
official release 2020.02.17
ニュースコメント
独自仮想通貨の開発を進める米大手銀行
最近、金融業界では各国の中央銀行によるCBDC関連のプロジェクトに注目が集まっており、仮想通貨を利用した新しい決済手段が誕生する可能性に期待が高まっているが、ウェルズ・ファーゴを含む米大手銀行は、積極的に独自仮想通貨の開発を進めているようだ。昨年2月には、JPモルガンチェースがJPMコインを開発していることが明らかになった。それに加え、ゴールドマンサックスも仮想通貨活用に関心を示しており、同社のCEOがステーブルコインの発行や資産のトークン化に関連するプロジェクトに着手する可能性があると言及している。ウェルズ・ファーゴのWells Fargo Digital Cashは、世界的なリアルタイムファイナンシングの実現に向け、既に米国とカナダ間でのパイロットを開始しているが、競合他社はどのような動きを見せるのか、今後も米国市場での展開を見守っていきたい。

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。金融ライターとして独立後は、仮想通貨およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。