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FXブローカーを揺るがす米中貿易戦争

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update 2022.11.10 13:16
FXブローカーを揺るがす米中貿易戦争

update 2022.11.10 13:16

中国当局の厳格な規制に柔軟に対応する必要性

米中貿易戦争が激化する中、中国当局は自国の資本規制策を徹底させるべく、同国でビジネス展開するFXブローカーへの規制を再び強化している。そのため、ブローカー各社は中国当局からの圧力に柔軟に対応する姿勢が求められている状況だ。

中国では毎年もしくは2年ごとにFX業界への規制を強めており、足元の数か月間でも、同国の国家外貨管理局(State Administration of Foreign Exchange, SAFE)及び中央銀行に当たる中国人民銀行(People's Bank of China, PBoC)が、監督下にある複数のブローカレッジファームの取り締まりを強化している。また当局は資本規制関連法に違反する行為を食い止めるべく、各取引の詳細を突き止め、外資独資企業(Wholly Foreign-Owned Enterprises、中国国内にて外国人投資者が100%出資する企業)に対する規制を強めることで積極的に法の抜け道を塞いでいる状況だ。中国で事業を営むブローカーにとっての主要課題は、如何にして顧客獲得を図り、有力なイントロデューシング・ブローカー(IB)と手を組むかではなく、資本を国外に持ち出す効果的な手法を見出すことである。グローバルに推進される規制強化と混迷を極める米中貿易戦争を勘案すると、中国が近いうちに外資企業に対する圧力を緩和することは想定しづらい状況といえよう。

中国の為替環境に目を移すと、人民元は過去10年間に亘り継続的に元高となり、2014年にピークをつけて以降はレンジ内で推移している。米国が毎年中国を為替操作国に認定するとの警戒感が高まっている中、中国政府は1ドル6.30元から6.97元の間で比較的安定した水準で為替政策を敷いている情勢だ。しかし今後、米中貿易戦争が激化することになれば、中国政府は外貨の国外持ち出しを食い止めるためにあらゆる策を講じなければならない。仮に外貨の国外流出が進めば、結果的にドル高人民元安も進行することとなり、米中貿易交渉に支障をきたす可能性が出てくるであろう。また、中国当局が為替相場を管理する中、米国のヘッジファンドHayman CapitalのCIOであるKyle Bass氏は人民元売りポジションを構築した旨のコメントを発表していたが、その後ポジションを解消すると共に香港ドルペッグを注視する[1]と発表しており、不透明感が高まる中国為替市場に苦戦する投資家も出てきているようだ。今年3月には、上海にてアジアトレーディングサミットが開催されるなど、金融業界において中国の影響力が増大している状況において、各トレーダーにとっては長期化する米中貿易戦争を見据えた難しい投資判断が求められているといえよう。

中国当局が規制を強化する一方で、ブローカーは規制の網を掻い潜ろうとする展開が続いている。ブローカーにとっては、たとえ厳格な規制を敷かれ、且つ中国を拠点とするイントロデューシング・ブローカーとの関係が複雑化しても、多数の富裕層を抱える中国の巨大市場は依然として魅力的に映っているようだ。しかし、中国で事業展開するブローカーの多くはオーストラリアを拠点としており、中国政府がオーストラリア当局に対し規制を強化するよう圧力をかけているのも事実である。そのため、オーストラリア証券投資委員会(Australian Securities and Investments Commission, ASIC)が中国を始めとする海外顧客向けサービスに注力するブローカーに対し厳しいスタンスで臨む可能性が出てきている。実際に、オーストラリアを拠点とするIFGMが海外顧客口座を閉鎖し、Vantage FXが豪国外の顧客へのサービスを停止するなど、混迷する米中貿易戦争の煽りを受ける形でFXブローカーの経営にもその影響が色濃く出始めていることがうかがえる。

勝者を見出せない米中貿易戦争が長期化する中、中国で事業を営むブローカー各社は、オーストラリアのブローカー同様に、中国当局の厳格な規制スタンスに柔軟に対応せざるを得ない状況といえるであろう。

release date 2019.05.30

出典元:

ニュースコメント

米中貿易摩擦による投資対象の見直し

今月5日、ドナルド・トランプ大統領が中国製品に対する追加関税を10%から25%に引き上げると発言し、立て続けに更なる追加関税の設定を13日に発表した。新たにに発表された対象輸入品には、スマートフォンやゲーム機器など、生活に直結した電子製品も含まれており、アメリカ国内の消費者に対する影響だけでなく、日本や韓国、台湾などのアジア圏のサプライチェーンへの影響も避けられないと見られる。中国では国内経済への影響に対する懸念から、早期に対応策を打ち出しており、預金準備率の引き下げにより国内企業の資金調達を援助するほか、インフラに対する増値税(日本の消費税に相当)の引き下げなど、国内消費を喚起し雇用を支え、追加関税による悪影響を最小限に抑える施策を積極的に行っている。また、中国はアメリカに対しての報復措置を示唆しており、国内外への対応に追われている状況である。両国の緊張状態は、2020年のアメリカ大統領選挙に向けて収束していくという見方もあれば、解決に5年~10年以上かかるという見方もあり、投資家にとってはリスクを取りづらい状態が続くであろう。米中貿易摩擦の長期化を受け、投資会社でもアセットアロケーションの見直しが活発に行われている。目先の投資先としては、貿易の影響を受けない内需産業や、独自技術を持つベンチャー企業、中長期的な成長が見込まれる開発産業の人気が高い。更には中国からの生産拠点移管を進める海外企業も存在するため、今後は外貨の流出先にも注目していきたい。


Date

作成日

2019.05.30

Update

最終更新

2022.11.10

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

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プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

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